
M&Aの成功事例から何が学べる?共通点、戦略の重要性を確認
M&Aに成功する企業や個人は、案件探しや交渉段階において何を重要視しているのでしょうか?実際の成功事例を見ることで、成功のヒントやリスク回避のポイントが分かります。M&Aの成功・失敗の定義についても解説します。
2022-08-12
「TRANBI」は、10万人以上のユーザーを抱える国内最大級のM&Aプラットフォームです。案件の掲載数は常時2,500件以上、未経験者によるM&A成約率は約75%に上ります。
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M&Aは何をもって成功なのか

近年はM&Aが中小企業や個人事業主のレベルまで拡大し、多くの人が企業や事業の買収に興味を持ち始めています。事業承継や新規事業への参入、人材の獲得などM&Aの目的は多様化しており、成功の形もさまざまです。
買い手にとって『M&Aにおける成功』とは、何を指すのでしょうか?
新たな企業価値の創出
売り手にとってのM&Aの成功のひとつとは、希望価格またはそれ以上の価格で自社を売却できることです。一方、買い手の成功は、ただ単に対象企業を安く買収することではありません。
M&Aを行うに当たり、買い手は経営戦略に基づいたM&A戦略を策定し、獲得したい効果やメリットを明確にします。期待通りの効果やメリットがM&Aによってもたらされることが、買い手にとっての成功といえるでしょう。
また、多くの企業は『シナジー効果による新たな価値の創出』を目的に、M&Aを実行します。投資資金の回収はもちろん、新たな企業価値が創出できたかどうかが成功を判断する一つの基準になるでしょう。
スモールM&Aの場合
個人や小規模事業者が行うスモールM&Aは、大企業が行うM&Aとは目的が少し異なります。
M&Aはゼロから起業するよりも時間的・金銭的なコストが抑えられるため、本業を補う副業や本格的な独立に向けた第一歩として、M&Aが選択されるケースが多いようです。
経営者としての経験を積みながら、会社をそれまで以上に軌道に乗せることが一つの成功の形といえるでしょう。
また『売却益』を得るために、M&Aに踏み出す個人や企業も増えています。自身が持つ経験やノウハウによって企業価値を向上させ、購入価格よりも高値で会社を売却できたときに、目的は達成されたといえます。
スモールM&Aの目的や事例については、以下もご確認ください。

成功事例から学べる重要なこと

事業承継・M&Aプラットフォーム『TRANBI(トランビ)』では、M&Aの成功事例や経営者のインタビューを紹介しています。これからM&Aに乗り出そうと思っている人、既に交渉段階にある人は、事例から成功のポイントが学べます。
M&Aを経営戦略の一つと捉える
M&Aに成功する企業は、M&Aはゴールではなく手段である点を理解しています。M&Aは経営戦略を構成する一つであり、独立したものではありません。
M&Aを実行すると決めると、M&Aを成立させることに力が注がれがちですが、必ずしもM&Aが最適な選択肢とは限らないのです。『なぜM&Aなのか』『ほかによい方法はないか』『買収のタイミングは適当か』を探ることが肝要です。
TRANBIには、当初のM&Aの予定を大きく変えた事例もあります。M&Aを行うのは時期尚早と判断した結果、後にこれこそ縁だといえる最適な案件に巡り合っています。M&A自体が目的化しないよう、『M&Aを必ず実行する』という考えは捨てましょう。

予算やターゲットを明確にする
M&Aの案件探しでは、限られた時間の中で、自社の条件に合う相手を選定しなければなりません。予算やターゲットを明確にしておくと、自社の希望に近い案件を効率よく探せます。
実際、全ての条件を満たす案件はまれで、完璧を求めればいつまで経ってもM&Aは成立しません。ここまでなら許容できるという妥協点を決めておくことも重要です。
TRANBIには1週間もかからずにM&Aを成立させた事例もあります。「直感や勢いだけで決めたのでは?」と思われがちですが、譲れない条件が明確だったため、迅速な判断ができたといえます。

交渉の方法
交渉方法は一つだけではありません。TRANBIの事例を見ると、以下のようなパターンで交渉を進めるケースが多いようです。
- 自らが直接、条件の擦り合わせ・価格交渉を行う
- 仲介会社のサポートを受ける
- 売り手の希望価格で買収する
M&Aのマッチングサイトは、売り手と買い手の直接交渉が基本です。希望価格を伝える際は、明確な根拠や理由を提示すると交渉がスムーズに進むでしょう。良好な関係性を構築するために、あえて値下げ交渉をしない事例も見受けられます。
『本業が忙しい』『M&Aの経験に乏しい』『取引規模が大きい』という場合は、仲介会社やアドバイザリー会社にサポートを依頼するのが賢明です。TRANBIでは、仲介サポートは行っていませんが、サイト内でM&Aの専門家一覧を紹介しています。
売り手の信頼を得るための工夫も
買い手の中には、他社よりも高い価格を提示さえすれば企業買収は容易にできると考えているところもあります。
売り手の立場で考えると、手塩にかけて育ててきた会社や従業員を手放すのは名残惜しいものです。買い手は『信頼できる買い手に会社を託したい』という売り手の本音を理解する必要があるでしょう。
実際、好条件を提示する買い手がいたものの、ビジョンや経営に対する思いが一致せず、売り手側から交渉継続を断った事例があります。
M&Aは単なる会社の売買ではなく、売り手の思いを引き継ぐことです。『買収』という言葉に抵抗感を覚える売り手も多いため、相手の立場や思いに配慮して交渉を進める必要があります。
飲食店買収のスモールM&A事例

飲食店をゼロから立ち上げる場合、内装工事や従業員の育成に多くのコストや時間が費やされます。M&Aで飲食店を買収すればすぐにでも営業をスタートできる上、業界未経験者でも大赤字を出す危険性は少ないといえます。
林業を営む会社が飲食店買収
飲食店のM&Aは、ノウハウ・仕入先・顧客をそのまま引き継げるため、異業種からの参入も少なくありません。
林業の繁閑差をカバーするために、林業を営む会社が都内の『甘酒カフェ』を買収した事例もあります。自社内にWeb広告に強い人材や食品衛生責任者の資格を持つ人材がいたことが、飲食店買収の決め手となりました。
林業は天候に作業が左右され、繁忙期と閑散期の差が激しいのがネックです。本業のほかに収入の柱を確保することは、リスクの分散やシナジー効果の創出につながります。
ブーム期待の甘酒カフェを300万円で買収!売上絶好調の林業会社ならではのM&A戦略とは?
個人事業主が洋菓子店を買収
廃業間近の洋菓子店を買収し、初めての飲食業で成功を収めた事例もあります。買収者は個人事業主として、販促物のデザインや写真撮影などを手掛けてきました。
飲食業界は未経験でしたが、対象店舗には既に熟練のパティシエが在籍しており、かつ一定の売上があったため、M&Aの実行に迷いはなかったといいます。自身が商品開発や販売戦略、マネジメントに関わることで売上や利益を伸ばしていく戦略です。
ゼロから飲食店を立ち上げる大変さを知っていたので、あえて価格交渉はしませんでした。スピーディーな決断と適切な戦略の結果、引き継ぎからわずか3カ月で売上アップを実現しています。

美容サロン買収のスモールM&A事例

エステや鍼灸、マッサージなどの『美容サロン』は、個人経営が多いのが特徴です。異業種による買収も数多く行われており、参入のハードルはそれほど高くはないといえます。既存の顧客を守りながら、新規顧客をいかに増やすかが課題となるでしょう。
学習塾を展開する会社が鍼灸サロンを買収
買収の目的や理由はさまざまです。企業の場合、事業規模の拡大や経営の多角化、シナジー効果の創出を戦略に含めるケースが多いですが、『従業員の待遇の改善に貢献したい』という思いで、美容系の鍼灸(しんきゅう)サロンを買収したケースもあります。
買い手は学習塾を経営するオーナーですが、家族に鍼灸師の有資格者がいました。そのため鍼灸師が国家資格でありながら、待遇面で報われにくいという業界の現状にかねてから心を砕き、いつか改善に寄与したいという思いがありました。
当初、売り手は3~4社と交渉中でしたが、鍼灸業界に抱く強い思いや熱意が伝わり、その後の交渉はスムーズに進んだそうです。

IT系の会社が美容系店舗を買収
IT系の会社が赤字の美容系店舗を買収し、売上アップに貢献した事例を紹介します。買収者はWebマーケティングなどを手掛ける企業で、主に『美容系の商材』を取り扱っています。
既存事業との親和性の高い美容系店舗の買収によって、クライアントのニーズをより深く理解することがM&Aの目的でしたが、結果的にお互いの弱みを補完するベストな選択につながったようです。
当初、売り手は新規顧客の集客に課題を抱えており、赤字経営が続く状態でした。『ノウハウや技術はあるものの集客が苦手』という売り手を、集客が得意な会社が買収したことで、引き継ぎ後は売上が着実に増加しています。

レンタルスペース買収のスモールM&A事例

近年は、パーティールームや貸し会議室、レンタルサロンといった『レンタルスペース』のM&Aが増えています。多くのスタッフを必要としない上に、初期投資もそれほどかからないため、M&A初心者向きといえるでしょう。
スモールM&Aでレンタルスペースの買収に挑戦した事例を紹介します。
個人がレンタルスペースを買収
TRANBIには、取引価格が500万円以下のスモールM&A案件が800件以上あります(2022年7月時点)。自己資金が少ない個人でもチャレンジしやすく、副業として事業をスタートさせる人も少なくありません。
案件探しのポイントの一つに、自分のスキルや経験が事業運営に生かせるかどうかが挙げられます。レンタルスペースを買収後、これまで培ってきたマーケティングのスキルを活用し、3カ月で売上を倍増させた成功事例があります。
レンタルスペース業には『在庫・パートナーを必要としない』『撤退がしやすい』『管理に手間がかからない』というメリットがあり、スタッフが1人いれば、本業の傍らでも運営が可能です。

コンサルティング会社経営者がレンタルスペースを買収
働き方改革や新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークを導入する企業が増えました。企業のオフィススペースが縮小するのに伴い、レンタルスペースの需要が高まっています
ローリスクである上に、大手企業の参入が少ないレンタルスペース業は、個人や中小企業にとっては最適でしょう。
TRANBIには、経営コンサルティング会社がレンタルスペースを買収した成功事例があります。今回のM&Aを皮切りに、次は子育て中の女性をターゲットにしたコワーキングスペースを設立する予定だといいます。

サービスなどの買収のスモールM&A事例

M&Aは店舗や企業の買収だけにとどまりません。ブログやWebサイト、バイクレンタルといった、ごく身近な『サービス』が買収の対象となるケースもあります。
会社員が副業のためブログを買収
M&Aを進めるのは、個人事業主や中小企業だけではありません。副業が可能な会社の場合、会社員と事業経営者の二足のわらじを履くケースも多く見受けられます。
特に、ECサイトやアフィリエイトサイト、ブログなどのWebサービスの買収は、本業のある会社員と相性がよく、初期コストもほとんどかかりません。TRANBIには『プログラミング学習・起業志望者向けブログ』の買収を、わずか6日で成約した事例もあります。
迅速な決断ができたのは『独自のチェック項目』で売り手を選定したことだといいます。自分の手が空いたときにだけ関われるWebサービスに限定した上で、本業で培ったスキルや経験を生かせるものを軸にリサーチしたそうです。
M&A成立後は、経営コンサルティングやIT領域の知見を生かしてブログを改善、引き継ぎ後からわずか2カ月で訪問者数120%を実現しています。

法人成り後、観光用EVバイクレンタル事業を買収
コロナ禍では観光業が大打撃を受け、経営難や赤字で倒産を余儀なくされる企業が増えました。一方でコロナの収束を見据え、赤字の観光用EVバイクレンタル事業を買収した事例もあります。
案件は、日本で唯一の砂浜道路がある千里浜なぎさドライブウェイをレンタルEVバイクでツーリングできるという内容で、買収者は『一度でいいからEVバイクに乗ってみたい』という顧客をターゲットにすれば、5~8年で投資回収ができると考えました。
M&A後は、近所へのレンタル事業やかき氷の販売といった新たな集客アイデアが次々と生まれているといいます。コロナ禍において、観光業への参入をリスクと見なすか、チャンスと捉えて挑戦するかは人によって判断が分かれるようです。
参考:コロナ禍で赤字の観光用EVバイクレンタル事業、売上を3倍にする敏腕経営者のアイデアとは?

中小・中堅企業によるM&A事例

日本の全企業のうち、中小企業が占める割合は99%以上です。マーケットが成熟し、右肩上がりの成長が見込めなくなった昨今、M&Aという新たな挑戦で活路を見いだそうとする中小・中堅企業が増えています。
ガーデン
株式会社ガーデン(以下、ガーデン)は、全国に外食チェーン店を展開する企業です。不振に陥った会社を再生させる『事業再生型のM&A』を得意としており、現在に至るまでさまざまな企業の立て直しを行ってきました。
2000~02年は不採算のカラオケ事業に注力し、2007年からは赤字の外食事業の再生を積極的に行っています。2017年には株式会社スパイスワークスから株式会社肉寿司の株式を100%取得しました。
ガーデンの特徴は、社内にM&A特別チームを設けていることです。店舗の立地・業態・人材の面から黒字化が可能かどうかを判断し、迅速に経営の見直しに着手します。
これまでに手掛けた企業再生は全て成功しており、現在もグループ企業化を積極的に進めています。
ビューティガレージ
株式会社ビューティガレージは、美容サロン向けの物販事業を主軸とする企業です。サロンの開業支援や人材育成サービスをはじめとするソリューションサービスにも力を入れており、美容業界の変革と発展に寄与しています。
2020年には、株式取得により株式会社和楽(以下、和楽)をグループ会社化したことを発表しました。和楽は美容業務用品器具の販売を手掛ける中堅の美容ディーラーで、創業四半世紀を超える歴史があります。
北関東の顧客基盤が強い和楽を仲間に加えたことで、今後はオンラインのみならず、オフラインでも多くの顧客を獲得していくことが予想されます。
ナガセ
株式会社ナガセ(以下、ナガセ)は、『東進ハイスクール』や『東進衛星予備校』などを運営する、民間最大規模の教育機関です。
2014年、株式会社サマデイをはじめとする5社が会社分割で新設する会社(株式会社早稲田塾)の全株式を取得し、現役高校生を対象とした大学受験予備校『早稲田塾』をグループに加えました。
塾業界は少子化の影響により市場規模の縮小が懸念されています。ナガセは2008年にイトマンスイミングスクールを運営するアイエスエス株式会社を子会社化しており、主力事業の柱を学習塾とスイミングスクールの2本立てにすることで、経営の安定を図る狙いがうかがえるでしょう。
さらに2022年には、ブリヂストンの子会社であるブリヂストンスポーツアリーナ株式会社の全株式を取得し、ブリヂストンスイミングスクール(イトマンスイミングスクールに名称変更)を事業の軸に加えています。
なお、ナガセの2021年4~9月期の連結決算は、最終損益が約10億円の黒字となっており、業績は堅調に推移しています。
大手によるM&A事例

多くの大手企業は、M&Aを成長戦略の一つとして位置付けています。市場拡大や競争力の獲得、破綻企業の再生などを主な目的としており、取引規模は中小企業のM&Aとは比べものにならないほどです。積極的にM&Aを行う大手企業の例を紹介します。
株式会社AOKIホールディングス
株式会社AOKIホールディングスは、ファッション事業・ブライダル事業・エンターテインメント事業などの複数の事業を手掛ける多角化経営です。
元々は紳士服事業が主軸でしたが、1990年代後半をピークに売上が落ち始め、新規事業による多角化経営に乗り出しました。
目を付けたのが、店舗内スペースの有効活用です。2003年に複合カフェ『快活CLUB』をオープンして以来、全国に出店を進め、今や複合カフェのトップ企業に成長を遂げました。
22年5月には、複合カフェ『スペースクリエイト自遊空間』を運営する株式会社ランシステムを子会社化し、無人化やリモート接客システムのノウハウを獲得しています。
綜合警備保障株式会社(ALSOK)
綜合警備保障株式会社(以下、ALSOK)は、法人・個人向けにセキュリティサービスを提供する警備保障の大手です。これまでも高齢者の見守りに対するサポートは積極的に行っていましたが、2012年からは介護分野への参入を本格的にスタートしました。
18年6月には、在宅療養者向けの訪問療養マッサージを提供する株式会社ケアプラスを子会社化し、22年には介護事業を手掛けるかんでんライフサポート株式会社と株式会社かんでんジョイライフの2社を完全子会社化しています。
ALSOKは、高齢者向けサービスを重要領域と位置付けているため、今後は介護分野での成長が予想されます。
株式会社IBJ
株式会社IBJ(以下、IBJ)は、結婚相談所を中心とする婚活サービスを提供する企業です。ITプラットフォームと人の手の両方による婚活サービスにより、年間1万組以上の成婚を創出しています。
同社は2020年3月、株式会社ツヴァイの全株式を取得し、完全子会社化しています。ツヴァイは紹介型の結婚相談サービスを展開してきましたが、マッチングアプリの台頭により顧客の獲得競争に苦戦を強いられてきました。
今後はIBJの下で『成婚メソッド』や『お見合いシステム』を導入しながら、体制の立て直しを図っていくようです。
まとめ
多くの企業や個人にとって、M&Aはゴールではなく手段です。M&Aの成功を考えるときは、『M&Aを通じて何を実現したいのか』を明確にすることが重要です。
希望通りの価格で買収できたとしても、想定していたメリットや効果が得られなければ、成功したとはいえません。これからM&Aに着手しようとする企業や個人は、成功事例から成功のポイントを学びましょう。
M&Aの事例は以下でも詳しく紹介しています。

成約・成功事例インタビュー|トランビ 【M&Aプラットフォーム】