
経営資源の引継ぎに利用できる補助金は?申請の流れやポイントを解説
事業承継にかかる費用の一部を補助する経営資源引継ぎ補助金は終了し、事業承継・引継ぎ補助金に引き継がれています。事業承継・引継ぎ補助金で補助を受けられる費用をチェックしましょう。補助金を受け取るまでの流れについても紹介します。
2022-10-07
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経営資源引継ぎ補助金の概要

経営資源引継ぎ補助金は、どのような役割を持った補助金なのでしょうか?経営資源引継ぎ補助金は2022年現在、既に終了している制度のため同様のサポートを受けられる補助金についてチェックしましょう。
中小企業者の事業承継をサポート
中小企業者の事業承継には、多額の費用がかかります。2019年末から流行した新型コロナウイルスによって経営に影響を受けた中小事業者は、十分な資金を用意できずスムーズな事業承継が行われない懸念がありました。
そこで、事業承継に必要な資金の一部をサポートするために作られたのが『経営資源引継ぎ補助金』です。『経営革新』と『専門家活用』の2種類の補助金から構成され、専門家活用は買い手支援型・売り手支援型に分かれていました。
- 買い手支援型(Ⅰ型):事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引き継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者等(要件あり)
- 売り手支援型(Ⅱ型):事業再編・事業統合等に自社が有する経営資源の引き継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者等(要件あり)
要件を満たした中小企業・小規模事業者には、50万~400万円の範囲で2/3の補助が適用されました(廃業など事由によっては200万円以内で上乗せあり)。
事業承継・引継ぎ補助金へと継続
経営資源引継ぎ補助金は。2020年度をもって終了しました。これから事業承継を計画している中小企業や小規模事業者が利用できるのは、『事業承継・引継ぎ補助金』です。
2020年度第3次補正予算と2021年度当初予算の『地域・社会・雇用における民需主導の好循環の実現』の一部として、予算に盛り込まれています。
事業承継・引継ぎ補助金を利用すれば、経営資源引継ぎ補助金で受けられたサポートと似た制度を利用可能です。
参考:令和2年度第3次補正予算及び令和3年度予算について |財務省
事業承継・引継ぎ補助金の概要

事業承継・引継ぎ補助金には『経営革新事業』『専門家活用事業』『廃業・再チャレンジ事業』の3種類があります。それぞれどのような場合に利用できる補助金なのでしょうか?対象となる企業の要件も紹介します。
M&Aも親族内承継も対象
経営革新事業は事業承継をきっかけに経営革新に取り組む際に、必要な費用の一部をサポートする補助金です。以下の3類型があり、第三者承継も親族内承継も対象とされます。
- 創業支援型(Ⅰ型):対象期間内に法人設立か個人事業主として開業し創業する際、廃業予定の企業や事業者から株式譲渡もしくは事業譲渡によって経営資源を引き継ぐこと
- 経営者交代型(Ⅱ型):親族内承継もしくは社内承継などによる事業承継で、経営に関して一定の知識や実績があること
- M&A型(Ⅲ型):M&Aにより事業を引き継ぎ、経営に関して一定の知識や実績があること
3類型のいずれかに当てはまり、新商品の開発や新分野への進出など経営革新に関わる取り組みを行った場合に利用可能です。
参考:事業承継・引き継ぎ等補助金(経営革新) | 令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
専門家にかかる費用に利用可能
親族内承継や社内承継で後継者が見つからない場合には、M&Aによる第三者承継を実施するケースがあります。第三者承継を行う上で必要な専門家に対して支払う費用の一部を補助するのが、専門家活用事業です。
以下の2類型があり、それぞれ要件を満たしていなければいけません。
- 買い手支援型(Ⅰ型):経営資源譲り受け後に経営革新を実施し、地域経済をけん引する見込みがあること
- 売り手支援型(Ⅱ型):地域経済全体をけん引する事業を実施しており、買い手である第三者が対象事業を継続する見込みがあること
また補助金を利用するには『M&A支援機関登録制度』へ登録されているFAや仲介業者に手続きを依頼する必要があります。
参考:事業承継・引き継ぎ等補助金(専門家活用) | 令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
M&A 支援機関登録制度公募要領(第2版)不要な事業の廃業にかかる費用も補助対象
企業が不要な事業を廃業する際にも費用がかかります。廃業にかかる費用の一部が補助の対象になっているのが廃業・再チャレンジ事業です。
経営革新事業や専門家活用事業とともに補助を受ける『併用申請』と、単独で補助を受ける『再チャレンジ申請』に分けられます。
併用申請はさらに以下の3種類に分類可能です。
- 事業承継やM&Aで事業を譲り受けた後の廃業:経営革新事業と併用し既存事業もしくは譲り受けた事業の一部を廃業する
- M&Aで事業を譲り受けた際の廃業:専門家活用事業(買い手支援型)と併用し既存事業もしくは譲り受けた事業の一部を廃業する
- M&Aで事業を譲り渡した際の廃業:専門家活用事業(売り手支援型)と併用し既存事業もしくは譲り受けた事業の一部を廃業する
再チャレンジ申請に該当するのは、M&Aで事業を売却できなかった場合に、需要や雇用を作り出す新たなチャレンジに向けて既存事業を廃業する場合です。
参考:事業承継・引き継ぎ等補助金(廃業・再チャレンジ) | 令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
補助金の対象は中小企業者等
補助金を利用できるのは中小企業基本法2条に準じた中小企業者等と決まっています。業種ごとに『資本金または出資総額』と『従業員数』により設けられている基準に照らし合わせ、中小企業者等に当てはまるかチェックしましょう。
- 製造業その他:資本金または出資総額3億円以下、または従業員数300人以下( ※ゴム製品製造業は従業員900名以下)
- 卸売業:資本金または出資総額1億円以下、従業員数100人以下
- 小売業:資本金または出資総額5,000万円以下、従業員50人以下
- サービス業(旅館業):資本金5,000万円以下、従業員200人以下
- サービス業(ソフトウエア・情報処理):資本金3億円以下、従業員300人以下
- サービス業(その他):資本金または出資総額5,000万円以下、従業員100人以下
補助金の上限や対象となる経費

補助金を申請し支給対象となると、どのような経費に対していくらまで補助されるのでしょうか?3種類の事業それぞれの上限額と対象を確認します。
経営革新事業
経営革新事業の補助率は、対象経費の1/2以内で100万~500万円です。例えば『人件費』『店舗等借入費』『設備費』『原材料費』『マーケティング調査費』などは、補助の対象になります。
加えて、以下の要件をすべて満たす経費でなければいけません。
- 事業への必要性が明確に特定できる経費
- 補助事業期間内に契約・発注し支払いを済ませている経費
- 実績報告で提出する証拠書類などで金額や支払いの確認が可能な経費
要件を満たした上で、事務局が認めたものが補助対象の経費です。例えば設備投資として900万円の機器を導入したなら、450万円の補助を受けられます。
参考:令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金経営革新事業【公募要領】|事業承継・引継ぎ補助金事務局 p.19
専門家活用事業
専門家活用事業の経費として認められるために満たす要件は、経営革新事業と同様です。要件を満たし事務局が認めた経費について、補助を受けられます。
補助対象となり得る経費は『謝金』『旅費』『委託費』『システム利用料』『保険料』などです。補助率は対象経費の1/2以内で、100万~400万円と定められています。例えばすべての経費に1,000万円かかった場合、400万円の補助を受けられます。
参考:令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金専門家活用事業【公募要領】|事業承継・引継ぎ補助金事務局 p.10,15
廃業・再チャレンジ事業
廃業・再チャレンジ事業でも対象となる経費と認められるには、こちらも経営革新事業、専門家活用事業と同様に経費の3要件を満たし事務局が認めなければいけません。
再チャレンジ申請なら『廃業支援費』『在庫廃棄費』『解体費』『原状回復費』『リースの解約費』などが対象経費になる可能性があります。併用申請では『移転・移設費用』も対象となるかもしれません。
また補助率は以下の通りです。
- 再チャレンジ申請:対象経費の1/2以内かつ50万~150万円
- 併用申請:廃業費の上乗せ150万円以内
参考:令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金廃業・再チャレンジ事業【公募要領】|事業承継・引継ぎ補助金事務局 p.12
補助金を受け取るまでの流れ

補助金を受け取るには、さまざまな手続きが必要です。あらかじめ知っておくとスムーズに手続きできます。申請から補助金交付後の報告まで、一連の流れを確認しましょう。
電子申請に必要なIDの発行など事前準備
まずは補助対象事業について確認します。事業の概要はもちろん、どのような経費や企業が対象となるか要件もチェックしましょう。
次に行うのは『認定経営革新等支援機関』への相談です。認定経営革新等支援機関は国の認定を受けた税理士や中小企業診断士・金融機関などを指します。
『認定経営革新等支援機関検索システム』を利用すれば、近くの認定経営革新等支援機関の検索が可能です。電子申請を行うためには『gBizIDプライム』も取得する必要があります。
交付申請し対象事業を実施する
事前準備が完了したら、交付申請に必要な書類を準備しましょう。必要書類は3種類の事業ごとに定められている『交付申請類型番号』によって異なります。例えば経営革新事業の交付申請類型番号1に該当する場合には、以下の書類の用意が必須です。
- 補助金交付申請書
- 交付申請(別紙)
- 認定経営革新等支援機関による確認書
- 住民票
- 税務署受付印のある直近の確定申告書(別表一、別表二、別表四)
- 交付申請時の履歴事項全部証明書
- 直近の確定申告の基となる直近3期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
交付申請はオンライン申請フォーム『jGrants』を利用します。交付決定の通知が届いたら、補助対象事業を実施しましょう。
事業完了後、補助金交付後の報告
対象の事業を実施したら『実績報告書』を提出します。事務局で報告書の内容を確認する確定検査が行われると、交付決定通知書が届くはずです。受け取るには補助金の請求もしなければいけません。
併せて、対象の事業によっては『後年報告』も必要です。
- 経営革新:『事業化状況報告』『収益状況報告』(補助対象事業完了後5年間)
- 専門家活用:『事後報告』(期間内に引き続きが完了しない場合のみ。補助対象事業完了後3年間)
参考:事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金のポイント

事業承継・引継ぎ補助金を活用するには、ポイントを押さえておくとよいでしょう。採択率アップにつながる加点事由をチェックします。加えて、計画的に利用できるよう、補助金が交付されるタイミングも重要です。
加点事由で採択率アップ
以下の通り、事業ごとに定められている加点事由があると、採択率や補助金の額に影響します。
- 経営革新事業:地域未来けん引企業であること・賃上げに関する要件を満たしていることなど
- 専門家活用事業:経営力向上計画の承認・経営革新計画の承認を得ていることなど
- 廃業・再チャレンジ事業:再チャレンジする主体の年齢が若いこと・再チャレンジの内容が起業か引継ぎ型創業であること
これらの事由がある場合には、証明する書類を提出すると審査で加点される仕組みです。
補助金の受け取りまでに時間がかかる
補助金の交付は後払いです。対象となる事業を行いその成果を報告すると、交付される金額が決まります。
そのため事業にかかる費用は、一度全額を支払わなければいけません。規定に従い、支払った費用の一部が交付されるまでには、実績報告書を提出してから2~3カ月はかかります。資金繰りが厳しい状況では、利用するのが難しいかもしれません。
まとめ
経営資源引継ぎ補助金は制度自体が終了しましたが、事業承継・引継ぎ補助金を利用すると、同様のサポートを受けられます。補助金は、経営革新事業・専門家活用事業・廃業・再チャレンジ事業の3種類です。
補助金の対象となる経費や補助率が異なるため、申請前に確認しておきましょう。加点事由や補助金は後払いで交付される点などのポイントも押さえておくと、計画的に補助金を利用しやすくなります。
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