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株式分割にはどんなメリットがある?目的、事例などを紹介

株式分割にはどんなメリットがある?目的、事例などを紹介

株式会社では、資本金を変えずに一つの株を複数の株に分ける『株式分割』を行う場合があります。株の分割は、企業や投資家にとってどのような恩恵をもたらすのでしょうか?目的やメリット、株式無償割当てとの違いについて解説します。

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M&Aは企業の成長や経営改善をもたらす強力な手法ですが、その成果を最大限に引き出すためには、その意味から手順、様々な種類やメリット・デメリット、そして成功や失敗の事例まで、包括的な理解が必要です。本記事では、それらを分かりやすくかつ具体的に解説します。これからM&Aを検討する企業経営者や関係者はもちろん、一般的なビジネスパーソンの方もぜひご一読ください。

株式分割とは

株式分割は、資本金を変えずに発行済株式総数を増やす方法の一つです。1株を2株、3株と分割すれば株数は増えますが、企業の時価総額は変わらないのが特徴です。

発行済みの株式を分割すること

『株式分割』とは、発行済みの株式を複数に分割することです。分割比率は事例によってさまざまで、1:2や1:3の整数倍で分割される場合もあれば、1:1.5倍や1:2.05といった非整数倍の場合もあります。

2021年9月、トヨタ自動車は1株を5株にする株式分割を実施しました。この場合、株式数は5倍に増え、1株の価値は1/5になります。分割をすれば株数は増えますが、1株あたりの価値が下がるため、資産価値は変わりません。

分割後の株式について、かつては『1株あたりの純資産額が5万円以上でなければならない』という純資産額規制がありましたが、2001年の商法改正で撤廃されています。

株式無償割当てとの違いは?

株式分割と類似する言葉に『株式無償割当て』があります。どちらも株主が有する株数を増やす方法ですが、いくつかの相違点があります。

株式無償割当ては、株主から新たな出資を受けずに株式の交付を行うことです。株式分割は株数が増加するのみで、株式の種類は変わりません。株式無償割当てでは、株主に対して同一種類の株式または異なる種類の株式を交付することが可能です。

『自己株式』の数が増加するかどうかも大きな違いです。自己株式とは、自社が発行した株式を株主から買い戻した上で保有する株式を指します。

株式分割では自己株式も増加するのに対し、株式無償割当てでは、自己株式への割当ては行われません。

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株式分割の特徴

株式分割には、どのような目的や特徴があるのでしょうか?株式分割を行った場合の市場の変化や、株式分割に関するプロセスについて解説します。

流動性を高められる

株式分割を行うと、市場における株式の流動性が高まるのが特徴です。流動性とは、市場に出回る株式の多さを示すもので、多ければ高い、少なければ低いと表されます。

株式分割によって取引単価が1/2や1/3になった場合、投資のハードルが下がり『小口投資家』が増加するでしょう。企業は株式分割によって市場での流動性が高まり、自社に投資をする投資家が増えることを期待しています。

投資家層の拡大で買い需要が高まれば、株価が上昇する可能性があります。株価上昇は、企業の経営安定や資金調達のしやすさにつながるのです。

条件によって特別決議は不要

株式分割を行う際は、会社の決議機関の承認を得なければなりません。決議機関は、取締役会設置会社では『取締役会』、取締役会非設置会社では『株主総会』です。

株主総会の決議には、『普通決議』『特別決議』『特殊決議』の3種類があり、株式分割の場合は普通決議が一般的です。

  • 普通決議の定足数:行使できる議決権の過半数を有する株主が出席
  • 議決要件:出席株主の議決権の過半数

ただし、株式分割で発行済株式総数が発行可能株式総数を超える際は、特別決議による『定款変更の決議』が必要です。

  • 特別決議の定足数:株主総会において、議決権の過半数を有する株主が出席
  • 議決要件:出席株主の議決権の2/3以上

なお『発行可能株式総数』とは、株式会社が定款を変更せずに発行できる株式の総数で、株主総会の決議によって決められています。

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株式分割を実施する意味

株式分割とは文字通り株式を分割することですが、株主からの金銭を必要としない新株発行とも捉えられます。企業はなぜ株式分割を行うのでしょうか?株式分割を実施する意味について見ていきましょう。

金銭の払い込みなしで株式を新規発行できる

企業は資金調達が必要なときや市場の流通数を増やしたいときに、新株の発行を行います。株式は発行済株式総数が増加すればするほど、1株あたりの価値が下がるため、既存株主は不利益を被ります。

株式分割は、既に存在している株式を細分化する方法です。投資家が購入済みの株式は1株2000円だったものが2株で2000円になるだけのため、資産価値に変化はありません。既存株主に対して不利益を与えずに、株数を増やす方法といえるでしょう。

株主からの金銭の払い込みがなくても新株が発行できることから、株式分割は『無償交付』や『無償増資』とも呼ばれています。

一部上場の基準を満たしやすい

企業が上場を目指す際や、上場企業が上場市場を変更する『指定替え』の際にも株式分割が用いられます。

東京証券取引所は、市場第一部・市場第二部・マザーズなどに区分されており、市場で自社の株式を売買してもらうためには、『流通株式時価総額』や『流通株式数』などの上場審査基準を満たさなければなりません。

2022年4月4日より区分はプライム、スタンダード、グロースに変更されます。

『流通株式数』を見ると、市場第二部への新規上場には2000単位以上、東証一部の場合は2万単位以上の株式数が必要です。

株式分割であれば、流通株式数が増えても保有株式の価値は変わらないため、流通株式数の上場審査基準に合わせる目的で株式分割が用いられる場合があります。

株主への影響は?

株式分割後は市場の流動性が高まり、株主や投資家はその恩恵を受けられます。株式の売買が容易になったり、これまでよりも配当金を多く得られたりするなど、メリットは少なくありません。

株式を売買しやすくなる

株式分割により株式が小口化するため、投資家は株式の売買がしやすくなります。

例えば、A社の株式が1株8000円の場合、8000円×100株=80万円の資金が必要です(日本株の最低購入株数は100株のため)。これを1:2の比率で分割した場合、1株あたり4000円となり、40万円(4000円×100株)でA社の株が購入できるようになります。

また手持ちの保有株数が増えると、一部を売却してキャピタルゲインを得ることも可能です。100株が200株になれば、100株を売るという選択肢も選べるようになるのです。

NISAを活用しやすい

一般NISA(ニーサ)は、2014年1月に始まった少額投資非課税制度です。数百円からの少額投資が可能で、年間120万円の非課税投資枠があります(2024年からは122万円)。

NISAの年間の投資上限は120万円なので、1株あたりの単価が高い株式は購入できません。株式分割が行われることで最低投資金額が小さくなり、NISAが活用しやすくなります。

例えば最低購入株数が100株、株価が1万5000円の株の場合、投資金額は少なくとも150万円(1万5000円×100株)必要です。1株が5株に分割されれば、1株3000円となり、最低30万円あれば購入できるので、NISAの年間投資限度額の範囲に収まります。

実質的に配当金や株主優待が増える

株式を保有すると、株主には出資比率に基づいた『配当金』が分配されます。配当金は1株単位でもらえるため、株式分割で持ち株数が多くなれば、その分、配当金や株主優待を受け取る機会も増加します。

仮に企業が分割前と分割後の配当金額を変えなかった場合、または事業が好調で配当金額が上がった場合、株主は2倍、3倍の配当金や株主優待を手にできる可能性があるでしょう。資産価値は変わらないものの、株主は実質的に得をすることになるのです。

また株式分割後に株価が大きく上昇すれば、株の売却による値上がり益(キャピタルゲイン)が狙えます。

単元未満株式は買取請求ができる

株式取引で売買される売買単位は『単元(たんげん)』と呼ばれます。最低売買単位である1単元に満たない株式は『単元未満株式(たんげんみまんかぶしき)』といい、金融商品取引所では売買ができません。

例えば1株を1.5株にする株式分割では、100株が150株に増えます。日本の株式は1単元=100株のため、50株の単元未満株式が生じるでしょう。

株式分割で単元未満株式が発生した場合、発行会社に対して保有株式の買取請求ができます。また、発行会社が買増制度を採用している場合に限り、足りない株数をプラスする買増請求を行うことも可能です。

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新株予約権は、あらかじめ決められた価格・条件の下で株式交付が受けられる権利です。株式会社では主に資金調達を目的に発行されますが、敵対的買収の対抗策としても活用されます。新株予約権の種類や手続きの流れを確認しましょう。

まとめ

株式分割は発行株式数が増えるだけで、企業の時価総額や持ち株比率に変化は生じません。配当金が増える、株式の売買がしやすくなるなど、株主や投資家にとってはメリットが多い施策といえます。

企業側には、株価を下げて小口投資を促す狙いがあります。株式分割後は、市場での流動性が高まる、企業を支える株主が増えるといった効果が見込めるでしょう。

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