2023-11-21
和歌山のフィットネスジムをM&A!億単位のM&A経験があるベテラン経営者が即決した理由とは
買い手(法人):株式会社グロウイング

<中小企業の新規事業を目的としたM&A・買収事例>
- ➤ 創業から25年。数千万円~1億円規模の大型M&Aも行いつつ、事業を多角化
- ➤ “ダイヤの原石”のように見えた優秀なスタッフに惹かれ、内見時に即決
- ➤ “スマートな買い手”であるために、細かいところには目をつぶる
- ➤ 新聞広告効果でさっそく12人が入会。当面は広告宣伝に注力
大阪に本社を構えており、不動産売買、自動車販売・レンタカー事業、飲食事業などを手掛ける株式会社グロウイング。
これまでも数多くの事業に挑戦し、多角化経営を進めてきた同社は、今回和歌山県にある女性専用フィットネスジムのM&Aに成功します。
数億円規模のものも含めて、これまでに6件ほどのM&Aを行ってきたグロウイング代表の栗山さん。今回の案件は、譲渡金額190万円ということもあり、現地見学に足を運んだ日に即決したといいます。
赤字が理由で売却に出された案件に、どのような勝算を見出しているのか。そして、M&Aを行う上での経営者としての心構えについて、お話を伺いました。
【創業から25年。数千万円~1億円規模の大型M&Aも行いつつ、事業を多角化】
- 創業の経緯や事業内容について教えてください。
自動車ディーラーに1年間勤めて、「自分でビジネスをした方が儲かる」と思ったため、22歳のときに独立しました。そこから25年間、中古車販売業をしつつ、現在は不動産業、建設業、沖縄県でのレンタカー事業、飲食業などを手掛けています。
他にも挑戦した事業はありますが、失敗したものもあり、今残っているのがこれらの事業です。
事業の多角化に踏み切ったのは、インターネットの発展に伴い、中古車販売業で以前のような利益が出なくなったから。「このままでは、中古車販売業はなくなる」と危機感を抱いたことは、今でも強烈に記憶に残っています。
そこで不動産投資を始めて、18年前から不動産売買を手掛けるようになりました。3~5億のマンションから開始し、60億円の物件を所有した時期もありました。
不動産価格の上昇やアベノミクスが追い風となりましたが、ここ5年ほどはスルガ銀行の不正融資などの影響で、右肩下がりに。最近は、新たな物件を買うことはなく、売却が優勢になりました。
沖縄でレンタカー事業を始めたのは、4年前。沖縄に縁があり、当時はインバウンドが盛り上がっていたからです。
しかし事業を始めてまもなく、コロナ禍に。ただ、2~3年耐えた後、最近はようやく売上が上がり、最近でも数社、沖縄のレンタカー会社のM&Aを行いました。
- これまで、M&Aはどのように行ってきましたか。
6度のM&A経験がありますが、金額が1億円規模のものや、少なくても2000~3000万円のものが多かったため、基本的には大手仲介会社を介して、もしくは弁護士や金融機関の紹介をきっかけに行ってきました。
紹介を受けた案件は、不動産が付いていたり、大きな償却資産があったりと、資産があるものが多かったです。
一方で、TRANBIのようなM&Aプラットフォームにも登録して、いつも案件を探しています。誰もが閲覧できるプラットフォームに出てくる案件は、譲渡理由が赤字のものも多く、厳しい目線で見極めることは必要です。
ただ単価は低いので、「失敗しても痛手ではない」と割り切ることができて興味のある案件なら、チャレンジする価値はあると思います。

(※写真はイメージです)
【“ダイヤの原石”のように見えた優秀なスタッフに惹かれ、内見時に即決】
- フィットネスジムのM&Aに興味を持ったきっかけを教えてください。
経営者という仕事柄、ついどこに行っても「この商売やお店は儲かっているのだろうか」と考えてしまう癖があって、ジムに通う中でもそう考えることがありました。
ジムは初期投資こそ必要なものの、広告宣伝費を掛けて会員を集めることさえできれば、オーナーが時間や労力を割かなくても売上を確保できる事業だなと。
TRANBIで案件を探す中で見つけたのが、今回購入したタニタフィッツミー和歌山店の案件です。
住まいは大阪ですが、中古車販売業でも和歌山に支店を出していますし、私は和歌山出身なので、「和歌山の案件なんて珍しいな」と興味を持ったのです。
最初は「和歌山県のフィットネスジム」という情報しかわからず、問い合わせをしたところタニタフィッツミーだとわかりました。
タニタフィッツミーは、健康総合企業のタニタがプロデュースする女性専用のフィットネスジムで、今回の案件はそこのフランチャイズ加盟店でした。
タニタこそ知っていたものの、タニタフィッツミーは初耳でしたし、女性専用のフィットネスジムは有名な競合他社があるためネームバリューがあるとも思えず、正直なところ最初は買うつもりがありませんでした。
- そこから、どのようにしてM&Aに前向きになったのでしょうか。
TRANBIでタニタフィッツミーの案件を知ったのと同じ頃、自宅からすぐ近くの場所で開かれる「フランチャイズ・ショー」という展示会にタニタフィッツミーが出展していると知りました。
時間もあったので立ち寄ってみると、ブースに居た担当者の方と意気投合して。話しているうちに、ジムという業態に興味が湧いてきたのです。
売買金額は安いものの、譲渡理由は赤字。コロナ禍が終わったため、売上が上がる見込みがあるとはいっても、それほど儲かる商売ではないと思っていましたが、一度現地を見学に行って、話を聞いてみてもいいのかなと。
もしイチからジムを立ち上げるなら、最低2000万円くらいの初期投資が必要ですが、M&Aならそれも掛からないですし。
そこで、展示会から帰ってきてすぐに、TRANBIを通じてM&Aの窓口である担当者の方に連絡を取り、交渉を進めていきました。
- どのような流れで、購入の意思決定をされましたか。
さっそく、タニタフィッツミー和歌山店を見学させてもらいました。
売り手様も、今回のジムはM&Aで購入されていて。本業に次ぐ事業の柱として期待していたものの、購入してすぐにコロナ禍に見舞われ、ずっと赤字が続いている状態で、今回の売却に至ったという経緯でした。
そのため、売り手様は一刻も早く事業を辞めたいと思っていて。私が見学に行った月の月末で辞めると、すでに大家さんにも連絡を入れている状態でした。
そんな状況で私が購入を即決できたのは、ジムで働いていたスタッフ2名が非常に優秀だったから。お会いした瞬間からすごく感じが良くて、とても優秀な方たちだと伝わってきました。働く人にポテンシャルを感じて即決し、内見時に「購入します」と返事をしたのです。
スタッフの方たちは、タニタ側から派遣された方ではなく、売り手様が自身で採用された方たちです。特に中小・零細企業や地方企業においては優秀な人材の確保が難しい中で、彼女たちはダイヤの原石のように映りました。

(買収したタニタフィッツミー和歌山店)
【“スマートな買い手”であるために、細かいところには目をつぶる】
- 財務資料などを精査する時間がなかったのではないですか。
財務資料などはほとんど見ていません。譲渡金額が190万円の案件だったので、この金額ならリスクを負ってもいいと割り切って、勢いで決めました。不動産を買うときも、M&Aをするときも、いつもピンと来たら即決するのが私のスタイルなので。
もちろん、譲渡金額が1億円規模のものであったり、金融機関やさまざまな関係者が絡んでくる大型案件では、さすがにその場で即決はできません。
しかし、中小規模の事業譲渡案件については即決するようにしています。いい案件はすぐなくなりますし、細かなリスクを考慮して検討する時間があれば、売上を上げる方法を考えた方が早いですから。
- 交渉において、困ったことはありませんでしたか。
ありませんでした。赤字案件で、売り手様から「とにかく早く手放したい」思いが伝わってきたこともあり、とてもスピーディーに交渉が進んだ印象です。
不動産賃貸契約に関しても、大家さんに価格交渉をしたところ、家賃を下げていただきました。不動産事業を手掛けていて、和歌山の不動産事情にも詳しいため、対等に交渉できたからです。契約書のひな形なども私が持っていたので、それを活用しながら、すぐに契約を締結することができました。
自分で言うのもなんですが、私が粗方のことを巻き取りつつM&Aを主導したので、売り手の方はスムーズに譲渡できて助かっただろうと思います。
自分が売り手側に立ったときに、細かい点を一つひとつ指摘してくる方には譲渡したくないと思うからこそ、多少気になることがあっても目をつぶって、細かいことも言わないようにしています。
- スタッフの方の引き継ぎもうまくいきましたか。
そもそも、売り手様はもともと廃業するつもりでしたが、スタッフの方が「続けたい」と言ったため、譲渡先を探すことにしたようなのです。
だからこそ、喜んでいただけましたし、見学に行った際にその場で「僕がオーナーとして引き継ぎますので、これからよろしくお願いします」と挨拶を交わしました。
現在スタッフは社員が3名、パートの方が1名です。グロウイングとの雇用契約に切り替えましたが、勤務形態や報酬などの条件は変えていません。
【新聞広告効果でさっそく12人が入会。当面は広告宣伝に注力】
- 改めて、購入されたジムの概要について教えてください。
タニタの子会社にフランチャイズ加盟している、女性専用のサーキットトレーニングジムで、店舗面積は45坪ほど。会員制で、メインターゲットは近隣に住む40代から60代の女性です。
店内では12台のマシンを円形状に配置していて、音楽に合わせながらマシンを2周する流れになっています。1から20までの項目があって、どの項目から取り組んでもOKで、2周をすると運動時間は約30分になります。メニューは有酸素運動中心で、負荷の掛かる運動はそこまでないので、楽しくわいわい運動できます。
会費は1ヵ月7000円前後で通い放題、契約期間は1年契約を選ぶ方が多いです。シンプルで効率良く運動ができることや、タニタならではの測定機器に力を入れているので体の組成を数値で把握しやすいことなどが特徴でしょうか。
- 赤字案件ということですが、どのようなところをテコ入れすれば、売上が伸びる余地を感じましたか。
広告宣伝費さえ掛ければ、確実に集客ができて会員数が増え、売上が伸びると思いました。ここ2年ほど、ほぼ広告にお金を掛けてなかったようですし、スタッフが優秀なこともあって、会員の定着率は高かったからです。
また、営業中はオーナーの私であっても男性は店舗に入ることが禁止されている、女性専用のフィットネスジムだからこそ、店舗のオペレーションや実態をどのように把握するかも重要だと思っています。
現在は店長の提案で毎日営業終了後に各スタッフのコメント付きの日報を送って頂いています。それぞれのスタッフの言葉で1日の状況と感想の報告をもらっているので雰囲気が伝わり、安心して任せられます。
実は、18年前から5年間、エステティックサロンを経営した経験があるのですが、そのときに失敗してひどく赤字になった経験がありました。
集客がうまくいかなかったことが一番の原因ではあるものの、暇な時間ができてしまうと、スタッフ間の人間関係の問題も起こりがちで。
ただ、エステティックサロンも男性の私が足を踏み入れられない空間だったために、ヒアリングなどはしていたものの、営業中の実態が掴みきれず、有効な改善の手立てを打つことができなかったのです。
経営者として反省することも多かったので、今回はそのリベンジをしたいという思いもあります。
- 広告宣伝は、どのような媒体を活用する予定ですか。
ジムのターゲットが40~60代の主婦層であるため、インターネットよりは紙媒体がいいだろうということで、新聞の折込広告や地方誌などの媒体、ラジオやテレビに広告を出稿しようと考えています。
すでに取り組み始めていて、初回は約60万円で単発の新聞折込広告に出稿しました。広告を打ってなかったこの2年間は、通りがかった人や知り合いから紹介を受けた人が月に1人くらいのペースで増えればいい方だったようですが、新聞広告を打ってからは、すでに12名の方が入会しました。
今後は、一面の1/3ほどのスペースの広告をタウン誌に継続して出稿しようと考えていて、それは1回あたり10~15万円の費用が掛かる見込みです。
「タニタ」ブランドは、健康器具や「タニタ食堂」の良いイメージが根付いていると思うので、広告を打って認知度さえ上がれば、自ずと会員数の増加に繋がると思っています。
- M&Aを振り返っての感想を教えてください。
金額が安価とはいえ、今回購入した案件は、最低でも約1年は赤字が続くであろうものです。
ただ、いつジムに足を運んでも、スタッフたちが明るく素晴らしい接客で迎えてくれるので、「このスタッフたちがいるなら大丈夫だ」と思えます。
また、一生懸命な彼女たちのためにも、必ず事業を成功させたいという気持ちにさせられて。広告宣伝費をどれだけ掛けられるか次第だと思うので、頑張りたいです。
またM&A以降、ジムに足を運ぶついでに和歌山に帰る事も増えました。これまで大阪や沖縄を中心に事業を手掛けてきましたが、このM&Aを機に地元の和歌山に少しでも恩返しができたらいいなと思います。
さまざまな事業を手掛けてきた中で、売上や利益だけを追求していたのでは、事業は失敗すると学びました。
一方で、しっかり思いを持ち、関わる人やものを大切にして、真剣に取り組んできた事業は成功してきました。そういった意味でも、売上や利益だけでなく私の人生トータルで考えて、メリットのあるM&Aだったと感じます。
- 最後に、M&Aを検討している方にアドバイスをお願いします。
ゼロから新規事業を立ち上げることとM&Aを比べると、自走しながら引き継ぎができることがM&Aの最大のメリットだと思います。
たとえばジムをゼロから立ち上げるとなると、3~4か月は掛かるでしょうし、売上が1ヵ月200万円だと想定すると、4か月で800万円ほどのロスがあります。一方M&Aなら、そうしたロスが生まれません。
M&Aはよく「会社同士の結婚」と表現されてきました。ただ、「結婚」という言葉には責任や重みが伴いすぎるので、あまりふさわしくない表現のような気もします。
むしろ、物や車を買うのと同じような感覚で、事業や店舗や会社を買えばいいのかなと。こうした動きが活発になることは、日本経済にとってもプラスですから。興味のある人は、どうか気楽にM&Aに臨んでください。
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■今回グロウイングさんが買収した案件はこちらら
■実際に運営されているフィットネスジムはこちら
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